これぞまさしく、究極のチーズ? 今夜は、ゼイタクな「ウォッシュ」。

「香りが強いほど、味は良し」
というが、はたして? 軟質チーズとしては、熟成期間はやや長め。別名、修道院タイプ。グルメな大人のチーズである。

それだからこそ、好き嫌いがはっきりしている。本場・フランス人でさえ、そうなのだ。そして、その原因こそは、匂いにある。

チーズの表皮を塩水や、地元のお酒でブラッシングしながら、熟成させる。その回数、時期、それに洗う液体により、そのチーズの個性が決まる。また、ブラッシングの回数が多いほど、表皮が湿り気を帯び、やわらかくなる。

昔は、ワラに付着した有用菌を使用し、チーズの表皮を形成させたが、現在は、納豆菌の仲間であるリネンス菌を液体に添加。表皮から熟成。分解力が強く、生育する表面は匂いが強い。繁殖によって、ネバネバ感がいっそう増す。

その繁殖を抑え、あるいは匂いをとりながら熟成をすすめ、その途中で、表面を塩水、アルコール類などで定期的にブラッシング。そうすることによって、チーズの表面の保護と、中身の湿度を保つ。

外皮がカサカサのノルマンディー最古の「ポン・レヴェック・タイプ」と、オレンジ色でしっとりとツヤのある「エポワス・タイプ」と分かれる。

「チーズの王さま」
と、かのブリア・サヴァランは、そのおいしさを称えている『エポワス・ド・ブルゴーニュ』は、ウォッシュのなかのウォッシュであり、ブルゴーニュ地方の誇りでもある。それにまた、美食家を自認する通好みの味わいのあるチーズでもある。

15~16世紀ごろ、シトー派修道士がはじめたといわれる。そして、ルイ16世のとき、食卓に出て、大評判をとる。

そんな名高いチーズも存亡の危機にたたされた。ニ度の大戦で、超有名・ワイン銘醸地、コート・ドールの小さなエポワス村はほとんど壊滅状態。それを、1956年、同村のロベール・ベルトーが、建物を買い取り、復活させた。やはり、フェルミエ製は少なく、工場制がほとんど。1991年、AOC。

牛乳製。円盤状。表皮はやわらかく、湿っていて、シワがある。大小2種類あって、直径9.5~11.5cm、高さ3~4.5cm、重さ250~300gはスモール・サイズ。ラージ・サイズともなると、高さは変わらないが、直径は16.5~19cmとなり、重さは700~1100gほどにもなる。

濡れたリネンス菌特有のオレンジ色は、ブラッシングすることで生み出された自然の色。”神さまのおみ足”ともいわれるクサヤ風味(?)の、実に個性的な強烈な匂いが特徴。秋~翌年6月までが旬。

初回は、水または塩水で洗い、ついで、ワインの絞りかすを蒸留したマールに水または塩水を加えながら、マールの分量を増やしつつ、週に1~3回程度洗う。マール使用は、殺菌が目的。

そのくせ、中身はあかるく黄色味を帯びたアイボリー色。まろやかでねっとりとした食感はおどろくほど。ミルクの甘みを感じるじつに濃厚で、クリーミーな味わいを堪能することができる。

製造から4週間ほどは、AOC指定気域内での熟成させる。その熟成ががすすむと、オレンジ色の表皮が茶褐色に変化し、中身はトロトロ。そうなると、スプーンですくって食べるのが通というもの。コク、後味ともに、まことにまろやかでエレガント。

でも、乾燥と、過熟には、ちょいと気をつけて! 

まず、乾燥だが、生地そのものの食感がボソッとして味気なく、風味さえも悪くなる。また、過熟もよくない。チーズ外皮のフチから乾いてくるのだ。もともとシワはあるのだが、それが増えてくると、苦味が出たり、ピリピリ感を感じるようになる。そんな場合は、表皮を取って、召し上がったほうがいいかも。

チーズには白ワインが基本だが、個性の強いチーズだけに、ここは赤ワインはどうか。それも、地元のタンニン少なめのブルゴーニュ・ワインを選ぶ。

かの偉大なるナポレオンは、ぜいたくにもシャンベルタンと合わせて、食べたそうな。う、うらやましい! ピノ・ノワールが多めのシャンパンはどうかな? やっぱり生臭く感じるかもなあ。

クルミ、イチジク入りのパンとともに。あと、香り系のクミンとか、キャラウェイ・シードなんかを混ぜるとおもしろい。

食べにくければ、バターと。外皮は食べても、残してもOK。その外皮、本場では、白ワインで洗って匂いをおさえることもあるそうだ。それでも、う~ん、ちょっとという方には、野菜といっしょにサラダをそえてると、グッと食べやすくなるというが、ためしてみては・・・

やっぱり、デザート向きかな。夏は若いものを放射状にカットして食べ、冬は完熟のトロトロをスプーンですくって、どうぞ召し上がれ。

参考;『チーズ図鑑 』(文芸春秋刊)

♪ 愛用の「iPod」で、クナッパーツブッシュのワーグナーの各序曲・前奏曲(ワーグナー名演集)を聴きながら、編集しております。クナが唯一愛したワーグナーだけに、実に思い入れがたっぷり。すべてが、名演である。♪