愛すべきチーズ、コンテ! 

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「何も足さない、何も引かない」
と、ある洋酒メーカーのCMのように、自然が育んだままごまかしのないチーズづくりを伝統としている地域がフランスにある。

その地域はまた、フランスを代表する自動車メーカーの発祥の地としても有名でもある。その地方のエンブレムをモチーフにしたあのブルー地の白いライオンのマーク、そうプジョーだ。

その地方こそがフランスを代表するハード・タイプの熟成チーズ、『コンテ』を産するフランシェ・コンテ地方である。昔から、そのチーズはジュラの山々でつくられてきた。
そんなジュラ山脈の北西斜面に、コンテ街道なるものがある。フランシェ・コンテ地方の北はドゥー県、南はジュラ県にいたる。

歴史は古く、「グリュイエール・ド・コンテ」の名で呼びなわされ、13世紀ごろまでには始まっていたといわれている。現在、その「コンテ」の里、ポリニーに拠点を置く「コンテ・チーズ生産者協会」がある。

「コンテ」の前身である「グリュイエール」だが、領主の管理地のことを、”グリュエリィ”と呼んでいたことやら、山林を管理していた”アジャン・グリュイエ”といわれる税金徴収官名などに由来していると思われる。

その当時のサイズは今よりも大きく、製造場所も1箇所にすぎなかった。アジャン・グリュイエ立会いの下、薪および搾乳の量などをチェックされ、多くの農家は共同でチーズづくりを行っていた。この共同でのチーズづくりは、現在でも協同組合方式として守られている。

大工場はないが、標高400m以上の村々にある”フリュイティエル”と呼ばれる協同組合センターとか、その規模もでかく、醗酵室もそなえた”レティエル”、また、1000mを超える斜面にあって、夏場だけ稼動する”シャレ”と呼ばれる山小屋で「コンテ」は製造される。

直径;40~70cm、高さ;9~12cm、重さ;36~56kgの車輪状の大型チーズである。全仏チーズ生産量がNo.1であり、仏AOCチーズの生産量の1/4を占めるフランスご自慢のチーズである。

季節により変化する牧草の状態によって、夏はハーブや高山植物を食べたり、冬は干し草を食べた茶色のブチのあるモンペリアル種のミルクにあらわれ、また長期熟成による、とりわけ熟成4~5ヶ月前後が独特の香りと相まって、香りを楽しめるといわれている。

一口目はやや苦く感じられかも知れないが、なんといっても、甘く香ばしいナッツの香りが特徴。やわらかくて食べやすく、フランス人に愛されているチーズである。普段は、ごく気楽に親しまれ、栄養価も高く、クセもなく子供たちも安心して食べられるチーズである。

それだからこそか、製造及び品質は厳しく管理されている。出荷前、品質専門鑑定員により、風味、食感、外観など5項目で各々等級分けがなされる。「コンテ」には、20点満点評価の品質基準があって、12点に満たないもの、それは毎年5%ほどは「コンテ」を名乗れず、たんに「グリュイエール」として販売されていることでも分かる。

12点以上は「コンテ」表示が許され、もちろんAOC認証。また、EUからもPDO認証されている数少ないチーズでもある。その上、その基準を満たしても、評価が、12~15点は茶色のベルのマークのラベルが貼られ、15点以上は緑色のベルのラベルといった具合で品質保証は、あくまで厳しい。

面白いことに、その出来上がった「コンテ」をまるでスイカのようにポンポンとたたき、中身に亀裂があるかないか調べるって、ホントかなあ? まあ、これは余談。

ミルクの搾乳後、直ちに最寄のフリュイティエルに運び込む。冷却保存してあったミルクともども、チーズ・ケトルに受けた生乳を40℃以下の温度で温め、スターターを接種。乳酸発酵を促し、レンネットを添加、ジャンケットへと変移させる。

およそ25~35分ぐらい待って、チーズ・ハープを使用し、すばやくカッティング。作業は、ほんの5分ほど。

しばらくすると、1cmにも足らないほどの切片と、ホエーに分離。そして、攪拌(かくはん)作業に入る。そのカード切片が収縮し、粒子ほどの硬さになったとき、薪とかスティームを使用し、54℃まで温度を上げ、45分ほど加熱。さらに、攪拌作業は続く。

そのカード粒子は、いよいよ米粒大に近づき、作業もやっと終了。次いで、1.8m角の麻布ですくい上げ、型詰め、プレス作業へと移る。

直径60~70cm、高さが12cmほどの円盤状のチーズは、ウラ、表に塩を軽く振り、一昼夜置いておく。それから、2日間食塩水につけたままの状態に置き、その後、醗酵室へと移動。ここで、生チーズはおよそ1ヶ月過ごすことになる。

チーズの反転を週3回、その都度塩をふりかけ、濡れた布巾でブラッシング。今度は、小さな醗酵室へと移され、同じ作業を繰り返す。ただ、ブラッシング作業は2ヶ月目は週に2回、3ヶ月目以降は週1回になる。

AOC規定で、発酵・熟成期間は最低90日以上と決まっている。熟成日数とともに、チーズ表皮は硬く、厚くなっていく。それをまた、削り取って塩水に漬け込み、それを何度もチーズ表面を磨き、硬い表皮を作っていく。

外皮の色も白から、黄色、赤茶色と濃くなっていく。同時に、16℃という高めの熟成室に置かれており、プロピオン酸の活動によって、’チーズ・アイ’と呼ばれるサクランボ大の気孔も出現。その中身の色はというと、アイボリーというより黄色味ががかってくる。

アフィヌールと呼ばれる熟成士により、最低4ヶ月~18ヶ月、ときにはそれ以上熟成・管理される。それが6ヶ月以上ともなると、「エクストラ・コンテ」と呼ばれ、ねっとり、コクにあふれ、なんでもトリュフの香りがするともいわれる最高級品になる。それに、2年熟成コンテもあって、Xmas限定だそうな。

熟成がすすんだ「コンテ」は、そのままの方がずっと旨い。とりわけ初夏から秋口にかけてのものは、格別だ。並みの熟成具合なら面白い食べ方がある。粒マスタードをチーズ表面に塗るのだ。でも、こうなるとワインに合わすというよりはビールだな。なんでも、昔は塩をまぶして食べたそうな。

用途は広い。サイコロ状にカットしてサラダ、薄くスライスしてサンドウィッチとかはもちろん、粉状にしてグラタン、パスタ料理に。コンテの4~5ヶ月ものと、1年コンテの1対1でチーズ・フォンデュもぜいたくだ。また、あつあつの魚や肉の上にのせて食べると、これまた旨い。

ワインは全般に適応か? 地元のアルボワの辛口白をはじめとして、シャンパンもいい。また、パニュルスなんかの甘口も結構いける。レーズン入りのパンとは相性がいいのもうなずける。

でも、今更なんだけど、ワインとチーズのマリアージュって何なんだろうなあ。最良の組み合わせと載っていた本を参考に、何度も試してみたが、どうにも疑問符がつくものばかりだった(笑)。敢えて言うなら、白ならまだしも、良い赤ならチーズとは合わさないほうがいい、と思うがどうなんだろう。

参考;『チーズ図鑑』(文芸春秋編、刊)

注;チーズ・ハード コンテ フランス編 再編集

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