一本の”ワラ”こそが、AOCのおスミつき!?

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山羊乳。一番、母乳に近く、脂肪分が少ない。さらに、栄養のバランスがいい。

世界各地でつくられているが、やはりフランスものがヴァラエティに富んでいて面白い。ロワール河南のベリー地方が有名。味も、形もさまざま。一口大から、300gまで。一般的には、小型のものが多い。まあ、なかには3kgのまであるらしいが…

フェルミエ製だと、春~秋が旬。これまた、工場制となると山羊の出産をコントロールしたり、冷凍技術の発達やなんやかで、今や一年中。なにはともあれ、他のチーズをさしおいて、真っ先に食べる大好きなフロマージュではある。

4つのタイプがある。

1)山羊乳独特の匂いもひかえめな「フレッシュ・タイプ」。

2)「白カビ・タイプ」は、匂いが強く、個性的な味わいが持ち味。

3)ぶどうの木とか、ポプラの木の木炭の粉を使用した「アッシュ・タイプ」。中身を保護しつつ、酸味をやわらげ、ほどよく水分を抜くために木炭の粉を使用。

4)乾燥させ、身を引き締めた「ハード・タイプ」とあって、濃厚でまろやかさが、特徴。

だけど、このシェーヴル、好き嫌いがはっきりと分かれる。

「シェーヴルは匂いではじまり、匂いでおわる」
と、よくいわれるように、いわゆるクセがあり、とりわけ、熟成したシェーヴルにおいては、独特の匂いがある。

だからといって、熟成期間なんて、そんなに気にしなくてもいい。それぞれの段階で味わいに変化があるからだ。乾燥熟成のため、キメが細かく、ボソボソした食感だが、さらっとした舌ざわり。酸味も、塩っけもほどほど。熟成は、最高で一ヶ月。フレッシュなら、数日で食べごろとなる。

たとえば、未熟な場合、水分を多く含み、酸味がやや強く、組織はボソボソ。適熟ともなると、おだやかな味わいになる。旨味が増し、表皮にうすい膜があらわれ、やや全体的に湿り気味。酸味は、全体にこなれてくる。表面が乾燥して完熟となると、旨味が濃厚になり、中身もひきしまり、酸味、甘み、潮味がほどよくバランスがとれてくるという具合だ。

フランク王国後期、カロリング王朝時、トゥール・ポワティエの戦いで、フランスが攻め入ったサラセン軍を破り、その撤退したあとに、食糧の山羊と、そのチーズが残されていたという。8世紀ごろのことだ。そして、ロワール河中流域がそのまま一大産地となった。

さて、シェーヴルのなかでも、すぐにそれと分かるキャラをもつ『サント=モール・ド・トゥーレーヌ』は、いまや生産量はNo.1。でも、意外やAOCの仲間入りは早くはなかった。名前の由来は、トゥーレーヌ地方のサント・モール高原からきている。

若いうちは、塩をまぶしているためか、外観はところどころ灰色ではあるが、木炭の粉(ポプラの樹)で真っ黒に近い。熟成するにつれて、自然のカビでグレーに変わっていき、中身の色も、真っ白から、アイボリー色になっていく。

乳酸発酵しつつある夕乳と朝乳とを混ぜ合わせたミルクをあたため、少量のレンネットを添加。ゆっくり時間をかけて凝固させ、ルージュを使って手作業にて、型詰め。

高さ24cm、開口部の内径6cm、底辺部4.5cmのラッパ形のプラスティック製。側面には、2cm間隔で水はけ用の小さな穴があいている。

自然脱水後、型枠からチーズを取り出す。長さ18cmと形をそろえ、両端の大きさが5.5cm、4.5cmほどの棒状。

ついで、型くずれをふせぐのと、空気を送り込むためとやらで、一本のライ麦のワラを通す。このワラには、AOC規定で生産者の番号が刻印されている。やや強い酸味をやわらげるために、灰をまぶし、麦わらを敷いた醗酵室の棚に移動。

熟成はほぼ10日。その頃になると、チーズの長さは、凝固して16cmほどになっている。早く熟成させて、早いうちに食べきるように作られているのだ。

サイズは、組織のもろいチーズを型から取りやすくするためか、両端の大きさがやや違うものの、直径は3~6cm、長さは、14~16cmの円筒形。重さは、250gほど。熟成するほどに、かたくなった表皮に青カビなどの「カビの花」が咲き、中身も引き締まり、やや小ぶりになる。

若いうちは、太いほうから、わらを抜き、その抜いた分だけカット。でも、熟成し固くひきしまってくると、抜けそうになくなったワラは、そのまま食べる。

それと、これが伝統的な食べ方なのか、太いほうの1cmほど残し、それからカットして食べるらしい。というのも、細いほうに向かって、味わいが濃くなり、塩分も強くなっているのだ。

スライスして、また軽くあぶってサラダに。クラッカーにのせて食べると、ちょいとしたおつまみ。フルーツもお忘れなく。フレッシュなら、メイプル・シロップと合わせるといい。

ワインとのマリアージュとなると、あくまで参考程度だが、同じ産地の軽い発泡性のあるヴーヴレが一番かな? 熟成すると、赤のシノンブルグイユもおすすめ。クルミ入りのパンと一緒にどうぞ。

参考:『チーズ図鑑』(文芸春秋刊)

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